また来年 部屋に差し込む夕日が眩しくて、は思わず目を細めた。
今年一番の猛暑に耐えかねて、暑い、と誰に言うでもなく呟くと、団扇で少し汗ばんだ体に風を送る。
「暑いな」
ひぐらしの鳴き声を聞きながら、三成も思わずそう呟いてしまう。
「暑いですね」
そう言うとは目を閉じ、幸村の顔と彼の住む信濃で過ごした休日を思い出す。つい先日まで、避暑と観光を兼ねて幸村のところでみな揃って世話になったのだった。
「また行きたいですね、みんなで避暑に。来年は、嫌がらせも兼ねて奥州にでも」
越後の酒に呑まれた数ヵ月の苦い記憶を思いだし、は少し眉を寄せる。その場に三成はいなかったので詳しいことは知らなかったのだが、彼の友である兼続の話によると、彼や謙信、景勝をはじめとする上杉軍の者に相当飲まされたらしい。
カナカナカナカナ、先ほどから聞こえるひぐらしの鳴き声が、夏の終りと秋の始まりがもうじきやって来ることを伝えている。
「もう秋か」
風に季節の変わりを感じてしみじみと三成が呟く。それに対して、そうですね、と相槌を打っては笑みを浮かべて言った。
「秋になったらお月見ですね。それと、紅葉狩りもしたいなぁ。あと美味しいものもいっぱい食べて……」
くすくすと笑いながら秋に思いを馳せていると、開け放たれていた襖から左近がひょっこり顔を出す。
「おやまぁ。お二人とも、相当参ってますな? どうです、すいかでも」
いただきます、と三人そろってすいかを口にすれば、三人の口が甘く潤う。しゃくしゃくと心地よい触感と甘さを堪能しきった頃には、夕日の姿はすっかり消えていた。 |